■備えあれば憂いなし-今日の話題 すべてのマネジメントシステム規格要求事項に気候変動適応が加わる!?① 気候変動については、これまでもいろいろな機会に、いろいろな切り口でお伝えしてきました。少しまとめ直してみましょう。気候変動とは、国連広報センターのホームページから引用するなら、「気候変動は、気温および気象パターンの長期的な変化を指します。これらの変化は太陽周期の変化によるものなど、自然現象の場合もありますが、1800年代以降は主に人間活動が気候変動を引き起こしており、その主な原因は、化石燃料(石炭、石油、ガスなど)の燃焼です。」としています。地球は、これまでの長い歴史の中で、たびたび気候変動が生じて、とてつもなく寒い時期と温かい時期とを繰り返してきました。とてつもない寒さの際は、直近では13世紀でした。その後、徐々に温暖化へと進み、18世紀後半の産業革命以降、異常な高温傾向へと進んでいるのが、現在の地球の姿です。気候変動は、昨今になって急に騒がれ始めたように感じがちですが、温暖化が注目され始めたのは1979年で、その後、国連が動き出し、1988年に政府間パネルのIPCCが設立され、1992年に気候変動枠組条約が採択され、1997年のCOP3京都会議で京都議定書が、2015年のCOP21パリ会議でバリ協定が発効、SDGsのターゲットのひとつにも盛り込まれ今日に至っています。産業革命時と比較して、温度上昇を1.5℃に抑えようとしてきた動きは、結局、直近で限りなく1.5℃に近づいていて、今後、2.0℃に抑えよう、2.5℃に抑えようと、上限目標を上げてしまっているのが現状です。気候変動がどのような現象を引き起こしているか、引き起こすのかについては、太田出版から出されている、インフォビジュアル研究所著の「図解でわかる14歳から知る気候変動」が、よく書かれており、私はおススメの書籍です。大人にもちょうどよい書籍と思っています。図解でわかる 14歳から知る気候変動 – 太田出版 (ohtabooks.com)。当書では、「気候システムの変動が起こす12のこと」として記しています。タイトルだけ引用しましょう。「世界の気温が上昇」「異常気象が日常化する」「感染症リスクが高まる」「熱波が都市を襲う」「食料生産地が北に移動する」「世界各地で水が不足する」「氷が溶けて海面が上昇する」「世界各地で水害が増える」「生態系が破壊される」「気候が生み出す新たな南北問題」「気候難民が生まれる」「世界経済が崩壊する」というものです。ショッキングな内容も含まれますが、実際に限りなく世界はその方向に進んでいると言えましょう。さて、SDGsに書かれている「気候変動」ターゲットについて、触れてみましょう。「SDGs №13気候変動に具体的な対策を」:17のターゲットの中にあるひとつのターゲットがこちらです。№13の中には、詳細目標が5項目記されています。「13.1すべての国々において、気候変動に起因する危険や自然災害に対するレジリエンスおよび適応力を強化する。」「13.2気候変動対策を国別の政策、戦略および計画に盛り込む。」「13.3気候変動の緩和、適応、影響軽減、および早期警告に関する教育、啓発、人的能力および制度機能を改善する。」「13.a重要な緩和行動や実施における透明性確保に関する開発途上国のニーズに対応するため、2020年までにあらゆる供給源から年間1,000億ドルを共同動員するという、UNFCCCの先進締約国によりコミットメントを実施し、可能な限り速やかに資本を投下してグリーン気候基金を本格始動させる。」「13.b女性、若者、および社会的弱者コミュニティの重点化などを通じて、後発開発途上国における気候変動関連の効果的な計画策定や管理の能力を向上するためのメカニズムを推進する。※国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が、気候変動への世界的対応について交渉を行う一義的な国際的、政府間対話の場であると認識している。」です。気候変動に具体的な対策を | 国連広報センター (unic.or.jp)。持続可能な開発目標・SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」のターゲットや現状は? (gooddo.jp)。国際的には、さまざまな取り組みが行われているものの、現状は明るい兆しはなく、結果として地球平均気温は上昇し続け、世界各地で気候変動に伴う災害が多発し、規模も甚大化しています。災害も、大雨、冠浸水、干ばつ、山火事、高温、低温と多岐に渡るようになっています。このような世界で進んでいる事象にスイスに本部を置くISO(世界標準化機構)も着目し、ISOの規格要求事項によっても、SDGsへの貢献が必要と考え、「ISO規格で国連の持続可能な開発のための目標に貢献する」という文書を2018年に発行しました。md_4263.pdf (jsa.or.jp)。気候変動について触れたターゲット№13のみならず、すべてのターゲットに対してISO規格ができることを、ターゲットごとに記しています。同時にISO内では規格整合化に関わるプロジェクトが、規格整合の元となる規格作成者向けのガイドラインに、気候変動を付加する検討を進め、2023年に入って当該規定を改定し「ISO/IEC専門業務用指針附属書SL(2023年第3版)」として発行しました。md_6146.pdf (jsa.or.jp)。ここで、共通テキスト4.1組織の状況、4.2利害関係者のニーズ・期待項に、気候変動に対する考察を加える追加を行いました。認証機関によっては、急に気候変動が登場したと捉えていますが、すでに以前から伏線があったことを知る必要があります。「MSSのための調和させる構造、及びその利用に関する手引」md_6147.pdf (jsa.or.jp)。さて、その動きに影響を与えている国際的な活動に、各国の気候変動の専門家や科学者、行政府が参画しているIPCC(気候変動に関する政府間パネル)という団体があります。IPCCは、3つのワーキンググループ(WG)とひとつのタスクフォース(TF)に分かれて、それぞれ活動しています。「WG1:気候システム及び気候変動の自然科学的根拠についての評価」「WG2:気候変動に対する社会経済及び自然システムの脆弱性、気候変動がもたらす好影響・悪影響、並びに気候変動への適応のオプションについての評価」「WG3:温室効果ガスの排出削減など気候変動の緩和のオプションについての評価」「TF1:温室効果ガスの国別排出目録作成手法の策定、普及および改定」です。IPCCは、2021年から第6次評価としてWGごとに報告書を世界に向け発行しています。個別に発表される報告は、2023年に統合報告書となって公表されていますが、もっとも注目しなければならないのは、報告書のひとつに記載ある「人間の活動による影響が大気や海洋、陸地を温暖化させたのは、疑いの余地がない」と言明した点です。このまま進展すると取り返しがつかない状況になると警告しました。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」気象庁 Japan Meteorological Agency (jma.go.jp)。前後しますが、日本では、2020年10月~12月の203回国会で取り上げられ、決議第一号として「気候非常事態宣言」が発布されています。「私たちは「もはや地球温暖化問題は気候変動の域を超えて気候危機の状況に立ち至っている」との認識を世界と共有する。そしてこの危機を克服すべく、一日も早い脱炭素社会の実現に向けて、我が国の経済社会の再設計・取組の抜本的強化を行い、国際社会の名誉ある一員として、それに相応しい取組を、国を挙げて実践していくことを決意する。その第一歩として、ここに国民を代表する国会の総意として気候非常事態を宣言する。」としています。気候非常事態宣言決議案 (shugiin.go.jp)。そして、2021年、日本弁護士連合会も民間団体として、「気候危機を回避して持続可能な社会の実現を目指す宣言」をしました。2021_5.pdf (nichibenren.or.jp)。このように見ていくと、気候変動については、否が応でも対応せざるを得ないキーになってきていることがわかると思います。 |
コラム:防災用語 「南海トラフ巨大地震臨時情報」南海トラフ沿い(静岡、愛知~宮崎までの一帯)のどこかで異常な現象がキャッチされ、あるいは巨大地震発生の可能性があると判断された場合、例えば、一部で南海トラフ沿いの地盤が割れ、ずれが生じた時等に、発表されます。その臨時情報には、「調査中」連動地震に発展する危険が迫っているか調査している最中ですという情報、「調査終了」調査を終え危険は迫っていないと判断しましたという情報、「巨大地震注意」巨大地震が連動して発生する可能性がありますという情報、「巨大地震警戒」巨大地震の連動発生が迫っていますという情報です。「巨大地震警戒」情報が発表されたら、すぐに避難するための準備に入ること、避難が間に合いそうもない可能性があれば事前避難に入ることが求められます。 |
★この日に起きた災害や事件、事故 浜田地震(明治5年)M7.1死者約550、広島新交通システム橋桁落下事故(平成3年)死者15、負傷者8 |
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